自然環境省   全記録作成者 工藤宝紀
話し手:サウルさん(写真前列左から2人目女性)
日時:2000年7月31日
場所:自然環境省内、自然保護エージェンシーのオフィスにて
通訳者:Tsogtsaikhan(ツォゴー)
参加者:GNC  :宮木・矢野・工藤・ツォゴー
・・・・・・・海外農業研究会 : 西山・山村・岸本・中川・池田・藤原
。。。。。溝口・太田・室永/植木/

宮木 はじめまして。今日はお忙しい中時間をとっていただいてありがとうございます。われわれは日本から来ましたGNCという名前の団体です。われわれがモンゴルにおける森林政策に関してご協力できることがどういうことなのかを知るために、現在どういったことが行われているかお聞きしたいのですが。大きく分けて二つあると思うのですけど、1つは砂漠化防止のための造林と、もう1つは農地、農業振興のための防風林造りと2つあると思うのですが、その2種類の植林に関して現在どういう状態にあるのか、それとそれがある程度進んでいるのだとしたらどこが担当しているのかということをお聞きしたいのですが。

サウルさん あの、ゴビ砂漠の南地域、そこに毎年300ヘクタール、植林をしています。ゴビ砂漠には3種類の木を植林していて、ポプラと、柳のようなザクと呼ばれる木、それからアカシヤ、これらは葉が良くつくので植えています。あとは火事にやられてしまった森に木を植える活動をしていますが、農業の防風林としては植林はしていません。防風林として植林をするということは予算的な問題がすごく大きいので、必要はあるけれども予定はしていません。ゴビに植林をするよりももっと費用がかかってしまいます。国が1年で5000ヘクタールの木を植える計画を毎年立てていますが、そのうちの70%予算は国から出ていて、残りは苗木作りの会社が出しています。しかし事実としてその計画のうちの50%ほどしか進行していません。県ごとに専門家がいて、その地域で植林することが指示され行われます

矢野 それはモンゴルの方だけですか?それとも外国の方も一緒にやっているのですか?

サウルさん
 予算的な支援は外国から入っていますが、参加はしていません。

植木 1994年に5000ヘクタールモンゴル国で造林したというデータがあるのですが、それ以降の95年から99年も計画どおりに造林されたのでしょうか?
サウルさん 94年に5000ヘクタール造林したというデータは正しくありません。実際はそれ以下でした。予算的に大変厳しい時期でしたので。それから2000年、今年の計画では10000ヘクタール植える予定です。

矢野 それはいつごろ植えるのでしょうか?

サウルさん 植林の時期というのは、春と秋なのですが、今年の春すでに6000ヘクタール植林しました。秋に残りを植えます。さっき言ったゴビ砂漠だけに育つザクという木、これだけは夏に植えます。夏の雨が来る前に植えます。
宮木 春というのは4月、5月ということですか?

サウルさん 春は4月27日から5月の20日までですが、その時の気候などによって変わってきます。秋は9月20日から10月の20日まで氷が張ってしまう前に木を植えます。

宮木 木を植えるときの計画なのですが、その計画は各県ごとに決めて中央政府に申請するのですか?それとも中央政府が決めて各県に指示するのですか?

サウルさん 計画と予算は政府から出ています。その計画の下に県の役所が事業をします。

宮木 実際に植林をしている人たちはどういった人たちなのですか?

サウルさん いろいろな人がいます。みんな雇われて木を植えています。

宮木 ちょっと立ち入った話なのですが、大体月にどのくらいの賃金で雇われているのですか?

サウルさん 大体月に20$から30$くらいです。

矢野 苗木はいくらで購入しているのですか?

サウルさん 木によっても、地方によっても違うのですが松は10から18トゥグルグです。10から18セントくらい。葉っぱがつくポプラなんかですともっと高いです。それは民営化された会社などが自分たちで値段をつけていて、松だけが値段が安い。

宮木 松だけがなぜ値段が安いのでしょうか?

サウルさん 松はですね、2年から3年育てた苗ですから期間が短いので値段が安いのです。ポプラなんかだと7年、8年育てたものを使用するので値段が高くなります。それから飾りとして売られているものですから、それもあります。

宮木 今主に植林しているのは砂漠化防止のための植林だと思うのですが、先ほど今はやっていないという農地のための防風林は、今はやっていないけれども担当は自然環境省なのですか?

サウルさん
 専門に担当している人は今いないですね。

宮木 去年農牧省に聞いたら自然環境省だといわれたのですが。

サウルさん 90年までは共産党時代で、防風林の予算を農牧省から出してそれを自然環境省がやっていたのですが、90年以降は農牧省からの予算が0になって、担当していた人も今はほかの担当になっています。

宮木
 では今は一応の担当は自然環境省で、予算は農牧省から出ていたものが出なくなって、その予算が砂漠化防止の植林のほうに全ていっているというわけですか?

サウルさん
 予算は政府から出ているのですが、農牧省は今の予算に関してはかかわっていません。材木を買って使用している会社が国にお金を払って苗木を買ったりしているのですが、そのお金の70%が森林利用料として入っています。

海外農業研究会 政府から計画とか予算をやっているわけですけど、専門家が植林をすることに対して政府は何らかの管理をしているのですか?管理という形で把握して県ごとに何かのデータなどを取ったりしているのですか?
サウルさん 管理しています。1ヘクタールに3000本植える計画なのですが、それは秋に政府から人が派遣されて、計画どおりに進んでいるかというのをチェックしています。


海外農業研究会
 活着率はどのくらいですか?
サウルさん 平均は60%くらいですがゴビ砂漠のほうは、一番厳しい環境にあるので60%以下です。防風林に植えていたものは70%でした。防風林は予算が出てくれば自然環境省も、農牧省も担当ができるのですが、予算がないので今進めることはできません。

宮木 日本のNGOなり助成を受けた団体などが予算面に大丈夫な場合に、防風林造りを一緒に協力してやることができる場合は、農牧省や森林局に問い合わせればいいのですか?

サウルさん もしGNCが何らかの機関と協力してやりたいというのなら、可能性はありますよ。

矢野 
どのくらいの規模で、どこに防風林を植えていくかというようなことをですね。

植木 確認をしたいのですが、自然環境省と森林管理センターとの関係はどうなっているのですか?森林管理センターは自然環境省の出先機関なのか、まったく別の予算で動いているのか・・・。

サウルさん
 それは、自然環境省の部門だそうです。予算はさっき言った70%から森林管理センターに出しています。森林管理センターに10から20%くらい出しています。その予算のほとんどが害虫防止や、調査にかかっています。苗木つくりなどの調査、新しい木の品種、害虫などです。

矢野
 自然環境省における森林のための全体としての年間予算はいくらくらいですか?

サウルさん
 年によって違いますが、ここ近年は毎年予算が増えています。1億トゥグルグくらいです。

海外農業研究会
 海外支援があるってちょっと前におっしゃったのですが、その支援というのは物質的なものですか、それとも金銭的なものですか?

サウルさん
 両方ですね。

矢野 どういうような支援ですか?

サウルさん
 たとえば、今支援してくれているのがオランダです。セレンゲ県には600ヘクタールオランダの支援によって木を植えています。あと兵庫県のコープはボグド山に15ヘクタール植える予算を出してくれています。

矢野 それは最近ですよね。

サウルさん
 はい。5月ごろに予算を出してもらいました。

宮木 今後何か協力をするときに、連絡をとる方法などをお伺いしたいのですが。今後、GNCのほうで予算がつくなり、話し合いをしたいときにすぐに連絡が取れるようにしたいと思いますので。

ツォゴー 
今ボクド山は危険な状況にあるのですよね。木がほとんど年をとってしまって自然に落ちてしまったりするのが多いし、周りにゲルで暮らしている人間が木を切ってそれを売ったりしてしまっています。

植木 
それは違法ですよね?

ツォゴー 
そうですね。そうなのですが・・・。

植木
 せっかく植林しても、それでは無駄ですよね。森林法で違反者に対する罰金が少なすぎるのだと思うのです。その罰金額を上げる予定はないのですか?

サウルさん
 罰金といっても、自然を破壊した場合の罰金は5倍、木を植える作業代、苗木代などの合計金額を5倍にして罰金を取っています。被害額の5倍ですね。
矢野 それでも、そういった人たちは減っていないのですか?

モ 木を切る人の数自体が減っています。なぜかというと以前は管理している範囲というのが広かったのですが、今はその範囲が狭くなっているからです。

植木 
専門家が増えたということですか?

モ そうですね。たとえばボクド山では面積は4万3千ヘクタールの中に20の機関が入って管理をしています。地方は違いますが。地方というのはボクドさんと同じ広さを管理しているのは2つしかありません。

宮木
 予算はまだついてないですが防風林を造れるような農地というのは場所としてはウランバートル周辺が多いのですか?地方にもありますか?

 共産時代には全国で防風林作りが行われたのですが、90年に入ってからはウランバートルを含めゼロです。

矢野 では造るとしたらウランバートルが中心ですか?

 今ほとんど農業やっている会社は以前はコルフォーズというのが共産党時代にあって、それは国でその計画をたてて全国で同時に植林などが行われたのですが、今のコルフォーズ小さな会社に分散され民営化されているので、その会社自身の土地を護るために防風林を造る、そういった計画になるんじゃないかと思います。今は会社といってもまだまだ防風林を作れるほどの予算が出せる力を持つという段階にはいたっていませんが。

矢野 モンゴル国として農地のための防風林を、今はできなくても将来は確実に必要であると思っていますか?

モ 今でも防風林は大切なものだとみんなが理解しているのですけど、やはり問題は予算なのです。

海外農業研究会 共産時代に作られた防風林というのは今も持続維持されて残っていますか?

サウルさん
 今まだ使われています。

矢野 
カラコルムの近くにあるのですよね。

サウルさん
ん あります。セレンゲ県のほうにも残っています。

モ 一番防風林が良くできたところというのはカラコルムです。それは防風林を造る為に苗木造りの畑も別に作りました。

植木 さらに確認したいのですが、自然環境省が予算・計画・研究などを担当、森林管理センターが実際の現地調査をする、そして、最終的にはアイマクごとに植林や森林管理を担当する、ということで合っていますか?

サウルさん
 たとえば県の役所から計画をここに出しています。今年何本植えるかなどの計画書です。それをもとに自然環境省が予算を出しています。森林管理センターは調査のみをしています。

植木
 それは私が言ったことで合っているという事ですか?

サウルさん
 そうですね。

植木
 ツォクトバートルさんがいらっしゃる研究所との関係はいかがですか?ジオエコロジーという研究所です。

ツォゴー 
それは科学的な機関ですか?

植木
 科学的な研究をしているところ・・・。

矢野 
森林だけでなく?

モ 
科学アカデミーという国の機関があって、その一部になります。たとえば森林とか地質なんかというのはこのジオエコロジーで、自然環境省とは関係がありません。関係としてはこちらから調査の依頼をして、実際に調査してもらっていますが組織の一部ではありません。

植木 これからGNCで植林のことを話すときに直接森林管理センターやアイマクに行って話をしてもいいのか、それともこちらの自然環境省で話をしたほうがいいのか確認したいのですが。

サウルさん
 やっぱり最初はこちらを通していただきたいと思います。今は休暇中でいませんが森林担当の専門家が一人います。ドルティシトゥンという名前の専門家です。

海外農業研究会
 遊牧生活の事を聞きたいのですが、遊牧生活がモンゴルでは残っていますよね。しかし防風林造りなどを政府が推奨しているということはこれからは遊牧よりも農業を推進するということですか?

サウルさん 全体としては農業を発展させるという計画があるのですが、それは遊牧民にのみ推奨されることではなく、遊牧生活の中に牧畜をしながら遊牧もするなどのスタイルでもいいと思っています。ただ農業を発展させる計画があるというだけで、今の段階ではまだなんともいえません。

 皆さんとは植林するという意味で目的は同じですから、これから協力していきたいですね。

植木 
コミュニティフォレストリーについてご存じですか?去年までアルノルドさんという方がモンゴルでこのプロジェクトをしていらっしゃったのですが、現在は帰国されたそうなんです。このプロジェクトのその後についてご存じでしょうか?

サウルさん
 今この計画が実現されているかわかりません。たとえば小さな会社などが企画していろいろなことをやっているらしいのですが全ては把握できていません。

植木 
アビルメドさんが担当者だと聞いたのですが。

モ 
それはこれから多くの機関や会社などを森林保護に参加させるための計画なんですよ。

植木 
その計画で実際に木を植えていくのは森林管理センターですか?

モ 
森林管理センターは調査的なことを行っているので実際に木を植えるということはありません。実際に行うのは会社や県の機関などです。森林管理センターや県の機関などを結ぶ役目をここで行っています。県が出した計画が可能であるかなどを森林管理センターに問い合わせるなどです。ここに森林管理センターの出したデータがあります。ここには面積とその中に何本木があるかなどが色分けされて書いてあります。これをもとにここの担当者が森林管理センターと会社とを結び木を植える計画を進めていきます。森林管理センターでは土地に番号を振り、管理しています。どの種類の木が何本どこに植えてあるか、その土地に川があるかなどです。

宮木
 そのデータというのはインターネット上などに公開されていますか?私たちでも閲覧することが可能なのでしょうか?

モ 
これはそういった形では公開されていません。土地を使いたいという依頼が合ってはじめて公開されます。どこかの土地を使いたいという機関などに渡しています。このデータを使用するにあたっては契約が必要です。どこの土地を使いたいのか、データをどう使うのか、そういったことを記入しサインをし契約をします。

宮木
 本日は長い時間ありがとうございました。                  
 

GNC Global Network for Coexistence
ホームへ