ツアー参加者の感想

1999年今関隆志・周子ご夫妻

Takashi & Shuko Imaseki
takashi shuko

今関隆志・周子ご夫妻と、GNCの出会いは4年前の稲村ガ崎でのエコハイクでした。たまたまその日の早朝、ラジオでエコハイクの広報を耳にされたお二人。人の縁ってとても不思議ですね。その後、隆志さんには研究報告会で、企業に身を置く技術者として「クルマの環境問題・・・技術における公と私」という演題で報告していただきました。とてもお忙しいお二人ですが、今年の夏はお仕事とのタイミングがうまくあって緑援隊に参加してくれることとなりました。新しく出会った仲間がモンゴルという国で、また、共通の目標をめざして、ともに一週間過ごすということの大きな意義を改めて実感させてくださったお二人です。

はじめて行ったモンゴルの印象は?

まず景色。
夜中に着いた空港から、旅行社の用意してくれたバスでウランバートルをめざした。 田舎の農道のような太い一本道をただひたすらに光をめざすように走った。道の傍ら にところどころに点在するのはゲル?それとも納屋?ホテルに着いて、朝まで部屋で睡眠をとる。部屋の中は清潔だし、近代的な作り。4 年前はトイレやお風呂の水が止まったそうだが、本当にそんなことがあるの?恐る恐 るトイレを使う。問題ない。噂に聞いたモンゴル事情でとは随分違う・・。少なくと も4年前とは随分変わっているのだろう。夜が明けたら、モンゴルは一体どんな顔を を見せてくれるのだろうと思いながらベッドに入った。

翌日、観光で行ったのは、椎名誠の「白い馬」を撮影したという映画村チンギスハー ン村。見渡す限りの大草原、キキョウ色の大空、明るい太陽の光。丘の上から、全速力で裸馬に乗って駆け下りてくる少年たち。すばらしく美しく、躍動的。それは思い描いていたモンゴルの風景だった。チンギス ハーンの時代、騎馬民族が駆け抜けた大地を想像し、身内から湧きあがってくる興奮 を覚えた。

次に、モンゴルの生活。

訪れたチョイバルサンという田舎町。
そこには中近東のオアシス都市のような、明るくゆったりした時間が流れていた。 道を走る交通手段の第一は馬。そして牛。らくだ。 暑い日差しの中を延々と歩くのはとてもできそうにない。そこに住む人々にとって馬や牛が大切なパートナーなのだ。 村では農業を営む人たちと出会った。 モンゴルの厳しい大地にはなかなか作物が実らない。 種を植えても、春の強風で飛ばされる。 土が乾いているためでもある。 そんな土は水をたくさん必要とするので、日々の水遣りは大変な重労働である。 水道はない。 畑のそばに掘った井戸からバケツを使って水を汲む。 何度も水を汲む。土はどんどん水を吸収する。朝も夕も水をやらなけれはならない。

昨年、GNCが植えた木は70%くらいが枯れていた。
いろいろな条件が重なったためだと思うが、1年たって、自分たちの植えた木が残っ ていないのを見た時、メンバーはどんなに残念な気持ちだったろう。厳しい気候条件 に耐えて農業を根づかせるのは並大抵の努力ではない。でもそこに住む人たちの大らかで気が長いこと。子供ははだしで大地を駆けている。一緒に土の掘り返しや木を植えるのを手伝ってくれる。水を汲むのを助けてくれる。にこにこと笑顔で手伝ってくれる。みんな素直で人なつ こいがはにかみやだ。手をつなぐ時は、おずおずと手をさしだす。しかし、女の子があどけなく笑いながら虫を足で踏み潰したのには驚いた。やはりモンゴルで生きる 子供たちである。

訪れた家庭では、お母さんとお父さん、妹とお義姉さんと生まれたばかりの赤ん坊が 、家族みんなで大きい部屋に一緒に住んでいる。食卓の上に妹の宿題のノートが広げ られていた。きっとお姉さんである彼女が勉強をみてあげるのだろう。帰ってくると子供たちが各自の部屋に引きこもってしまう日本とは違った家族関係である。チョイバルサンの最終日に、ザハという名前で呼ばれる市場に連れていってもらった 。強烈な匂いと殺気立った人々がたむろする場所。牛が解体されて、肉が売られている 。頭や骨は地面に投げ出されている。肉にハエがたかるので、売り手がうちわで追っていた。市場を歩く時には油断してはならない。買い物に気をとられているとポケッ トを探られるという。商品のほとんどは中国から運ばれたもの。食べ物、衣料品、靴 から石鹸、化粧品まで。非常にあやしげなタグがついているものもある。商品の種類 の多さといかがわしい雰囲気に圧倒されている内に何も買わずに出てきてしまった。 あそこで買い物をするには度胸と年季が必要だ。
感じたのはスローな空気とゆったりと流れる時間。沸き立つエネルギー。生きていく人々のたくましさ。

そして、最後に人々の志。

この国は、共産主義が崩壊し、民主化がはじまったばかり。 社会システムもインフラも、まだ整備されていない。 貧困などの多くの問題を抱えている。 それだけにとてもフレキシブルだ。 何人かの若者に出会った。国を変えてやろうと目をきらめかせている若者ばかりだっ た。目標を高く掲げ、それに向かって一生懸命努力している。 女性のパワーもすごい。 いつのまにか輝きを失った先進国日本の若者の目を思った。

はじめて行ったモンゴルで、いろんなことを体験した。 畑を風から守る防風林を作るためのヒョロッとした苗木を、広大な大地に植えた。 成果が上がるまでには気の遠くなるような時間がかかることを実感した。 早く成果を上げたいが…そのギャップを思い知った。 しかし、このプロセスそのものも大事であると気がついた。 木を植えながら、みんなと一緒に見る。一緒に話す。一緒に食べる。一緒に考える。

これが私たちが今回手に入れた一番の宝物だ。
そして、本で読んだり、テレビで見たことのあるモンゴルが、いつの間にか一番身近な国になった。


shuko & ippei & takashi。
神様の丘にて1999年8月。