2006年度 春季エコツアー概要報告

実施日程:2006年5月13日~5月20日

月日 移動 予定 食事
5月13日(土) 飛行機 成田空港集合(11:00)
成田空港発(OM502)(2:30 1時間遅れ)
ウランバートル着(7:30)
(モデル農場内宿泊施設&GNCゲル泊)
機内食
5月14日(日) 専用車 市内で買出し&事務所見学・打ち合わせ
モデル農場の記録用撮影
(モデル農場内宿泊施設&GNCゲル泊)


5月15日(月) 専用車 第4回GNCエコ教室 実施
(モデル農場内宿泊施設&GNCゲル泊)


5月16日(火) 専用車 9:30モンゴル国立大学エコロジー教育センター訪問
(ツォグバダラフ センター長)
11:00 第108学校訪問
(温室視察と今後の事業についての打ち合わせ)
12:30 ジャルバー氏(ジオエコロジー研究所)面会
2:30 モンゴル国立音楽舞踊大学訪問(ナランフー 学長)&記念植樹(マツ)
5:00 第23学校見学
5:30 ジオエコロジー研究所訪問
(ツォグバータル 所長) 
(モデル農場内宿泊施設&GNCゲル泊)


5月17日(水) 専用車 バヤンチャンドマン村訪問(ガンボルト 村長)
&苗畑候補地視察
(モデル農場内宿泊施設&GNCゲル泊)


5月18日(木) 専用車 モンゴル国立大学エコロジー教育センター
(セミナー&植樹300本)
(モデル農場内宿泊施設&GNCゲル泊)


5月19日(金) 専用車 第18学校訪問(エンフバット校長)
ノヨさん(GNCモンゴルスタッフ)の経営する工場見学
ジャムスラン氏(森林・動物センター長)と打ち合わせ
全体交流パーティー(レストラン MARAL TAVERN)
(市内ホテル泊)

5月20日(土) 飛行機 ウランバートル発OM501便
成田空港着(12:30)

機内食

 

GNC日本スタッフ  宮木いっぺい(代表) 矢野明子(事務局) 大西 郁(専門スタッフ)
GNCモンゴルスタッフ ツォゴ(モンゴル代表)、ノヨ (事務局)、トゥプシン(事務局)
  アムガ(専門スタッフ)
同行通訳 エンフーシ

<モンゴルGNCのオフィス訪問> 5月14日

GNCのモンゴルオフィスをはじめて訪ねました。昨年の秋にオープンし、今では諸々の機材もそろい、ネット環境も整い、とても仕事のしやすいオフィスです。場所はロシア大使館の目の前で、誰もが立ち寄りやすい便利なところです。今回のツアー中も、様々な打ち合わせ、事務作業をするのに大いに役立ちました。

 
(左)モンゴルGNCオフィスの外観 (右)オフィス内の掲示板

モンゴルGNCのスタッフは、モンゴル代表のツォゴさん、事務局のトゥプシンさん、ノヨさん、ナスカさん(現在日本在住)、専門家のアムガさんからなり、一騎当千の頼りになるメンバーです。今回のエコツアーの下準備を、日本人スタッフが何もすることが無いほど見事にしてくれました。今後このオフィスが、GNCに関わったモンゴルの方々のネットワーク拠点となり、ここから新たに様々なプロジェクトがスタートすることを願っています。

 
(左)左奥 モンゴル代表 ツォゴさん (右)ノヨさん

 
(左)トゥプシンさん (右)アムガさん

 

<モデル農場でのエコ教室(第23学校・第108学校参加)> 5月15日

参加者
GNC日本スタッフ 3名(講師 大西 郁氏 含む)
GNCモンゴルスタッフ 3名 
第23学校 生徒 16名、同行教師 3名 
第108学校 生徒 31名 同行教師 3名

今回も、恒例となった「エコ教室」をGNCモデル農場で行いました。 今回は参加校として、昨年の第108学校に加え、第23学校が加わりました。実は、第23学校は、モンゴルGNCのスタッフ、ナスカさん、トゥプシンさんの母校でもあります。第23学校の生徒16名、第108学校の生徒31名、そして同行した先生もあわせれば総勢53名が農場を訪れました。全員日本語クラスの生徒なので、まずは一人ひとり順に日本語で簡単に自己紹介をしました。笑いが絶えず、リラックスしたムードでエコ教室がスタートしました。

内容は、プログラム順に並べると以下の通りです。

1.GNCの活動紹介(宮木いっぺい・矢野明子)
2.特別授業「身近な環境を守ること」(大西 郁)
3.アニメ「木を植えた男」鑑賞
4.全員でラジオ体操
5.苗畑での実習(マツの植樹)
6.全員で日本の歌(「今日の日はさようなら」)の合唱

大西さんの授業は昨年に引き続き同じテーマで、今やウランバートルを中心に広がっているゴミ問題の深刻さ、重要性が生徒たちにかなり浸透してきた印象を受けました。またアニメ「木を植えた男」は、昨年と違ってモンゴル語吹き替え版(GNCの事業として作成しました。)での上映で、作品のメッセージがより一層ダイレクトに生徒たちの心に届いたようです。

  
(左)大西氏の授業 (中央)授業を受けている生徒 (右)ラジオ体操の風景

終了後の感想文には「感動しました」との声が多く書かれていました。また、都会育ちの両校の生徒たちにとって、炎天下の苗畑で泥だらけになって植樹したことは、新鮮な体験でとても楽しかったようです。ビデオムービーのレンズを向けると口をそろえて日本語で「楽しいー」と叫んでくれました。

  
(左、中央)植樹風景 (右)集合写真 

今後も、GNCのエコツアーの核となる活動として継続してゆきたいと思います。また、できるかぎり多くの学校にこの取組を広げてゆきたいと考えています。ただし、参加校が増えた場合、限られた時間とマンパワーの中でどう対処してゆけばよいかが今後の課題です。

 
(左)23学校の生徒 (右)108学校の生徒

 

<第108学校訪問> 5月16日

昨年に引き続き、第108学校を訪れました。昨年の話し合いで提案され、その後スタートしたGNCとの共同プロジェクト(温室作り)の進捗状況について報告を受け、現場を視察し、今後のプランについて打ち合わせをしました。昨年5月に第108学校の生徒やGNCメンバーが一緒になってゴミ拾いをした場所が、温室建設用の敷地として整備されていました。温室が完成したあかつきには、第108学校の環境教育プログラムにとって重要な舞台となることが期待されます。(第108学校は環境教育に関する様々な教育プログラムを創立当初から実施し続けています。)

  
(左)第108学校 (中央、右)温室予定地

<モンゴル国立音楽舞踊学校訪問> 5月16日

モンゴル国立音楽舞踊学校(生徒830人、教師160人)をはじめて訪問しました。ナランフー学長は、昔ロシアに留学しトランペットをおさめた方で、とても気さくな方でした。今回は、これからスタートするGNCとの共同プロジェクトについて打ち合わせを行いました。ナランフー学長の希望は、表通りに面した音楽舞踊学校のキャンパスに植樹し、昨年オープンしたモンゴル国立大学エコロジー教育センターのエコ植物園のようにしたいというものでした。

 
(左)トランペットを吹くナランフー学長 (右)キャンパス 

芸術関連の学校とのコラボレーションはGNCにとってはじめてで、今後がとても楽しみです。新しいネットワークができることはそれ自体喜びですが、それに加え、持続可能な地域づくり、まちづくりの大切さを、芸術関連の場所から発信することの意義は大きいと考えます。なぜなら幅広い層へ向けての理屈抜きのメッセージ力を期待できるからです。今回のうれしいサプライズは、学生たちが、訪れたGNCのメンバーのためだけにミニコンサートを開いてくれたことです。馬頭琴、声楽、室内楽、バレエ、伝統的な踊りなど多彩な内容で大いに楽しみました。とりわけ最初の馬頭琴演奏は母らくだからはぐれた仔らくだの悲しさと不安を描写した曲でスタッフ一同涙がでるほど(涙を流して!)感動しました。

  
(左、中央、右)ミニコンサートの様子

ミニコンサートの後、将来の音楽家の卵と一緒になって、最初の10本(マツ)をキャンパスに記念植樹しました。このメンバーの中から将来の大音楽家が生まれたらとても楽しい思いをするだろうと思います。終了後は、GNCの専門スタッフのアムガさん(モンゴル)と大西さん(日本)が中心になって、音楽舞踊学校のキャンパスの図表を前に今後の具体的な植樹プランについて詳細な検討作業にはいりました。

  
(左、中央)植樹方法 (右)生徒の集合写真

<バヤンチャンドマン村訪問>5月17日

トゥブ県バヤンチャンドマン村をはじめて訪れました。今回の目的は、バヤンチャンドマン村、GNC共同の苗畑造成プロジェクトについて打ち合わせをし、予定地の視察をすることでした。詳細につきましては、以下に記しておきます。

バヤンチャンドマン村苗畑造成プロジェクト

<意義>
現在モンゴル国において植林、緑化の重要性が広く認識されはじめていますが、一方でそれを利用して自らの利益追求のために供給量と価格をコントロールする苗木会社が多くなっています。そのため植樹のための苗木を安価に安定的に入手することが以前にくらべ困難になりました。そこで森林再生、緑化を推進してゆくためにGNC自身で安価で安定的な苗木供給システムを構築する必要があると考えました。

<造成地選定理由>
専門スタッフの調査にもとづき、ウランバートルからさほど遠くなく、かつ苗畑に適した土、環境を有し、何より自治体および地元住民ボランティアの全面的な協力が得られる場所としてトゥブ県バヤンチャンドマン村を選びました。当地には小中高の学校、および農業大学(旧ソ連時代に創られた農業専門短期大学。もとは800人の学生がいたが、現在は150人に減ってしまった。)もあり、教育啓蒙、学生とのコラボレーションの可能性が高いことも好材料でした。

<事業内容>
村内中心部の温室で、カラマツ、アカマツ、ニレ等を種から栽培し、くろうめのどき5000本、野生黒葡萄5000本を挿し木栽培すること、および、村郊外(地名:ブルハンティンアム)の2ヘクタールの土地を苗畑に造成し、カラマツとアカマツを育てること、以上の2つがプロジェクトの具体的な柱です。そのため常駐の技術者と臨時の作業員を雇用する予定です。また、村内でビデオを上映し、勉強会を開催することを通して地元住民とともに緑化の大切さを考え、長期的な協力関係を構築したいと考えています。

バヤンチャンドマン村は、ウランバートル市から西北72キロ(車で2時間弱)に位置し、890戸3500人からなる村です。890戸のうち500戸は貧困に苦しんでいるとのことでした。全部で28000頭の家畜がいますが、他の村に比べると少なく、経済基盤として、家畜ではなく農業(主にジャガイモ、カブ、にんじん)に頼っている村です。村長は、就任して1年(任期4年)のガンボルト氏、とても気さくで豪快な方でした。大学では数学を勉強していたとのことです。

  
(左)バヤンチャンドマン村の全景 (中央)ガンボルト村長 (右)集合写真

まず村長室で今後のプランについて話し合いを行い、その後、苗畑造成予定地を視察しました。予定地の場所は、GNCの専門スタッフのアムガさんが事前に諸条件を考慮して選定しておいてくれました。村から郊外に30分ほどいったところにあり、周囲が自然のポプラに囲まれ風よけになっていて、土質もよく、苗畑造成に適していました。雲ひとつない青空のもと造成予定地にシートを敷いて、ガンボルド村長や村の方々も含め、皆でピクニック気分で昼ごはんを食べました。バヤンチャンドマン村とのコラボレーションの記念すべきスタートの宴(?)となりました。

  
(左)打合せの様子 (中央)苗畑造成予定地 (右)ピクニック気分の昼ごはん

 

【大西氏からの専門的所見】5月17日(バヤンチャンドマン村)

1.元々森林地帯であった事(森林脇)、以前は中国人によるジャガイモ畑であった事から、苗畑に適する土地であるように思えます。
2.土壌もさわった感触はとても弾力があり、砂壌土ではない保水性・通気性のあるように感じました。圃場予定地も三方が森林に囲まれ、風の通り道でないことは活着前(定着前)の幼苗木にとっては非常に良い条件であります。

今後の苗畑農場への提案
1.作(幼苗木の列)は斜面(高低差)に対して、横に作った方が良いと思います。元々乾燥地帯なので、斜面(高低差)に対して縦に作ると水や土壌が流れてしまい、  物理的条件は悪くなります。横に作ることで水や土壌を流さないようにします。
2.地下水を利用して灌水をする場合は、汲み上げ直後の水温は冷たいので、半日くらい陽に当てて水に熱を持たせる方が良いと思います。また、高温下での灌水はその後土壌に熱を含ませ、苗木を高温多湿条件にしてしますので、陽が傾いてから行なう方が良いと思います。
3.ホースの口にはシャワーヘッドを必ず付けた方が良いでしょう。無駄な灌水量を 防ぐ事と、土壌を撹拌し根を傷つけることを防ぎます。
4.周辺には放牧の牛や馬などの家畜がいることから、苗畑の周囲には柵を設け、家畜の侵入を防いだ方が良いと思います。食害の恐れが予想されます。

<モンゴル国立大学

エコロジー教育センター訪問> 5月16日&5月18日
―セミナー & 植物園での記念植樹―

 モンゴル国立大学エコロジー教育センターは、自然環境分野の優れた専門家を早期から育成するため、全国から選抜された高校生の集まる教育機関です。先ごろ、昨年までセンター長だったバザルドルジ先生が退任しモンゴル国立大学の名誉教授になり、ツォグバダラフ教授が後任のセンター長に就任しました。ツォグバダラフ教授とは今回が初対面でしたが、バザルドルジ先生も交え大変フレンドリーにお話ができ、今後もGNCとの共同プロジェクトのエコ植物園事業をさらに充実させることはもちろん、セミナーをはじめさまざまな取組においてコラボレーションしてゆくことを確認しました。また、センター長がかわるのに伴い、現場の担当者の顔ぶれも新しくなりました。担当者の名前は、デジッドマーさん(女性)、オットゴンサイハンさん(女性)、エンクバイヤーさん(男性)の若い3人です。


左:エンクバイヤーさん 左から三番目:ツォグバダラフ教授
右から:デジッドマーさん、オットゴンサイハンさん 

今年は、学生の参加しない専門家だけのセミナーを開き、その後、エコ植物園で記念植樹を行いました。セミナーでは、以下の4つの報告、すなわち 

1.「日本とモンゴルの自然環境」
(バザルドルジ モンゴル国立大学名誉教授、モンゴル国立大学エコロジー教育センター前センター長)
2.「大気汚染の森林に与える影響」(バータルビリグ教授 モンゴル国立大学森林学部長)
3.「ミコリズ(きのこ)を使った植林」(ジオエコロジー研究所員、GNCスタッフ アムガさん)
4.「淡路景観園芸学校の紹介」(GNCスタッフ 大西郁さん)

がなされました。大西さんの景観に関する話は、これからの都市デザインのあり方を問い直す内容でした。具体的には、行き当たりばったりで建物や施設や公園などを配置するのでもなく、アーティスティックな個人的趣味に偏って配置するのでもなく、まず第一に、そこに暮らす人々の居心地の良さを合理的に考え抜いたうえで都市デザインを行うことの重要性を説明したものでした。参加メンバー全員の関心を大いに集め、今後のまちづくりに是非生かしてゆこうという話になりました。

  
(左、中央、右)セミナーの光景

その後、皆で楽しく昼食をとった後、新旧のセンター長も含め、スタッフ一同で記念植樹を行いました

  
(左、中央、右)記念植樹の光景

【大西氏からの専門的所見】

植物園への提案
・枯死した枝葉はもちろん、地面に対して垂直に伸びた枝(光合成しにくい)、樹木の内部に生長した枝((光合成しにくい)は剪定したほうが良いでしょう。これらがあることで樹木自身に負担をかけてしまい、健康状態を悪くしてしまう可能性があります。
・植物園や公園の設計計画に関わる基本的なことをあげます。

1.比較的長い距離の直線を作るときは、歩く目線を散らす為の工夫や、目線の先にアイストップになるアイテム(植物・花壇・オブジェ等)を設置すると良いでしょう。
2.広い場所を歩かせる時は、断片的にでも仕切りになるようなものを配置すると良いでしょう。お互いの流れ(交差)を妨げることを防ぎます。
3.交差点になる場所の中央には、人の流れを分ける為に、アイテム(植物・花壇・オブジェ等)を設置するのが良いでしょう。
4.直線的に歩く道に平行する道(動線)は、直線的ではなくクランクやスラローム状にしたりして、遊びを持たせます。
5.公園や植物園は「何の為にあるのか?」「どう過ごすのか?」ということを充分に考え、遊び心や誘惑するような仕掛けを作り事が良いでしょう。

<全体交流パーティー> 5月19日  レストランMARAL TAVERNにて

今回もいつもと同様、ツアー期間中に出会った全ての方々を最終日のパーティーにご招待しました。幸い、ほとんど全ての方々、そして第23学校と第108学校の生徒も大勢駆けつけてくれました。いつものように途中、モンゴルの歌と日本の歌の歌合戦で盛り上がり、全員で大声を張り上げました。また、恒例となりましたが、ツアー中に撮影した写真のスライドショウを行い、お世話になった皆様の紹介も行いました。このパーティーが、これまでGNCと1対1で関わっていたモンゴルの方々同士が横のネットワークを築いてゆくためのきっかけになればと思っています。最後は、それぞれの国の言葉で「幸せなら手をたたこう!」を振り付けつきで歌いました。また9月のツアーで再会できることが楽しみです。

  
  
パーティー風景

本事業は平成17年度「 緑の募金国際緑化公募事業」 に認められ、助成対象となっております。