第63学校野菜作り授業

2004年6月

GNC代表理事 宮木いっぺい 殿

GNC会員の皆様

    モンゴル国青年海外協力隊   養護    田島健二

宮木様、GNC会員の皆様はじめまして。
私、青年海外協力隊でモンゴル国に派遣されている田島健二と申します。
現在ウランバートル市ハンオール区の63特別学校という貧困層と軽度の知的障害児が通学する学校で働いております。
先日GNCモンゴル代表のツォゴーさんとお会いいたしました。その際私共の学校にビニールハウスをご支援いただくことになり誠にありがとうございます。
現在63特別学校では教師と生徒、総動員でビニールハウス建設に携わっております。写真は6月3日現在の写真です。 もう少しでハウスは完成いたします。今日は先生と子どもたちで一緒になってハウス作りをしました。 このようなハウス作りの経験はきっと子どもたちの将来に役に立つと考えております。今日ハウス作りをした子どもたちの中で、将来農業に携わる子どもが現れてくれ ればと思います。
GNC様のホームページも拝見させていただきました。GNC様の事業は環境や自然を大事にし、自然を通して人間育成をされている素晴らしい事業だと思います。
このような素晴らしい事業をされているGNC様に私も少しでもお役に立てればと思います。
モンゴルのこと、63特別学校のことで何かございましたらご連絡ください。できる限りGNC様のお役にたてればと考えております。
この度はビニールハウスをご支援いただき誠にありがとうございました。
これからも何卒よろしくお願いいたします。
それでは失礼いたします。
2004年6月4日


子供と教師が協力して

子供たちが釘を打っています

もうすぐ完成です!



2004年9月

宮木様、矢野様ご無沙汰いたしております。モンゴル63特別学校田島健二です。
畑のご報告が大変遅くなってしまい申し訳ございません。
こちらモンゴルはすっかり秋めいてきて、青い草原は黄葉がはじまってきました。夏の間、畑の方は学校の先生と私で日々管理してきました。
しかし如何せん初めての畑ということで色々な失敗も多いです。

白菜の出荷時期を逃して菜の花にしてしまったり、水撒き用のホースが破れて水撒きがうまくいかなかったり。

そして矢野様に「畑の管理体制をもっと強化された方がよい」というご指摘を受けましたので、63特別学校の校長と畑泥棒防止用の照明を購入することを検討していた矢先に畑泥棒に入られてしまったりとなかなかうまくいかないこともありました。

現在は添付した写真の通り学校の屋上に照明を置いて、泥棒対策をしております。

さて現在63特別学校の畑は収穫の時期を迎えております。

添付いたしましたキャベツの写真はもうそろそろ収穫です。
またGNC様から寄贈していただいたビニールハウスの中では、きゅうりが大きく育っており、もう何回か収穫をしております。
しかし最近きゅうりの葉っぱが黄色くなってしまったことが少し心配です。

ジャガイモの方もそろそろ収穫の時期になっております。9月から新学年が始まるので、子どもたちと収穫しょうと計画中です。

子どもたちと収穫いたしましたら、またご報告させていただきます。

それでは本日はご報告までとさせていただきます。
失礼いたします。                            

青年海外協力隊 モンゴル国 養護
田島 健二
          

63特別学校の概要


63特別学校はハンオール区のヤールマグという貧困層の人が多く住んでいる地域にある学校で、ヤールマグから多くの子どもたちが通学しています。63特別学校はハンオール区の(社会的不利による)ハンディキャップを持った知的障害児のケアと将来的な生活訓練を行うための学校です。現在はおよそ310人の生徒が1年生から8年生(モンゴルでは1年生から4年生が小学生、5年生から8年生が中学生)まで各学年2〜3クラスの計18のクラスで勉強しています。教師は40人近くいます。現在の学校長はエルデネバータル氏、教頭先生はミヤグマルスーレン氏、ソーシャルワーカーはテンギス氏で、主にこの3名が学校運営に大きく携わっています。
学校の教育目標は知的障害児や貧困の子どもに参加均等な発達に応じた安定した社会参加や、彼らのために彼らの能力に応じたモンゴルにおいての特殊教育と職業能力を保証することです。そのたの教育として知的障害児が彼らの問題を軽減することの出来るよう8年間の基礎教育を行っています。教えている教科は数学、モンゴル語、生活様式、健康管理、モンゴルの伝統的言語、生活(植物)、歴史、地理、自然、言語発達、音楽、運動訓練などで、専門教師が約10教科において教育を行っています。



「63特別学校」という名称

私が赴任する前、JICAの調査表ではこの63番特別学校を「63番養護学校」と訳していました。そして調査表の中の説明では「貧困家庭の子どもの学校」という記述がありました。日本には「貧困家庭の子どもの学校」というものがないため当初63特別学校の子どもの実体を把握することは困難でした。
この問題を解決しょうと子どもたちに知能テストを行いました。知能テストの内容はWISKという知能テストの下位検査の1つ「数の記憶テスト」(注1)というものです。
このテストを実施した結果、63特別学校の子どもの50%が正常域、障害を持っていると判断できる子ども(障害域)が20%、そして境界線の子ども(正常域と障害域の境界線の子ども)が30%でした。
この結果から窺える63特別学校の子どもの実態は、「障害は重度ではないが、金銭面や学習の遅れにより普通学校で学習をするのが困難な子ども」です。このような子どもの学校は日本にはないと思います。
このようなことから日本の養護学校のイメージとは違うモンゴルの貧困層の子どものための学校を「養護学校」と訳すのではなく、新しいカテゴリーとしての「特別学校」という言葉を使って訳しています。

63特別学校の野菜の授業について

   63特別学校には昨年(2003年)から野菜の授業が始まりました。昨年は畑を作ることが主な活動で、子どもたちと教師が一緒になって畑の土を掘り起こしていました。しかし昨年は63特別学校の財政面での問題から野菜の種をまく時期が大幅に遅れてしまったため充分な収穫ができませんでした。そこで今年はJICAのゲル基金(注2)という基金から63特別学校にお金を貸し出し、早期に野菜の種買い、適切な時期に撒きました。ゲル基金で貸したお金は収穫後に返済してもらうことになっております。
   6月7日現在畑ではジャガイモ、たまねぎ、にんじんの芽が出ました。

(注2) ゲル基金
モンゴルのJICA関係者からお金を出資してもらい(帰国時に返す)モンゴルの銀行に預けます。現在モンゴルの銀行は金利が18%という高い金利なのでその利息で貧困の方々に何かをしょうという基金です。私もこの基金の役員です。

63特別学校の財政
   モンゴルの学校は国や市から学校運営の資金をもらっています。学校運営費の使い道は教師の給料、電気代、冬場の暖房費です。これらの資金は学校の生徒数に比例し、一般的な10年制の学校では生徒数が2000人ですが、63特別学校は生徒数が300人と極端に少ないため63特別学校の学校運営費は他の学校に比べてとても少なくないです。このため63特別学校では冬場の暖房代が払えないため冬場に暖房がつかなかったり、電気代が支払えないため電気が一時ストップしてしまうことがあります











完成したハウスに
野菜の芽が出ました


6月15日撮影






畑に撒いた種からも
続々芽が出ました

6月15日撮影

水撒き(6月7撮影)

じゃがいも植え(5月17日撮影)


2004年11月
GNCの皆様へ
宮木 いっぺい 殿
矢野 明子   殿

モンゴル青年海外協力隊 田島健二

初霜の候、時下ますますご清祥の段、お喜び申し上げます。日頃は大変お世話になっております。モンゴル青年海外協力隊田島健二です。
今年の日本は台風、地震と天災が多いということを伺いました。今年の天災で多くの犠牲者の方が出られたとのこと、ご冥福をお祈りいたします。被災地の復興が早急に進めばと思います。

さて本日はGNCの皆様からの寄付金の会計報告と収穫のご報告をさせていただきます。
まずは野菜の収穫のご報告から。
畑の野菜は順調に成長し、9月中旬に全ての野菜の収穫を終えました。収穫高は添付エクセルファイル「GNC様会計報告、収穫高・売上げ会計報告シート」をご覧ください。

モンゴルの秋は寒い日と暖かい日の温度差が急激なため、収穫は子どもたちと短期間に早急に行ないました。収穫の際の写真を添付いたします。
子どもたちははじめての野菜の収穫だったので戸惑いながらも、とても興味深く、楽しく収穫していました。また取れたての野菜をおいしそうに食べていました。子どもたちが収穫したニンジンを水洗いせずに土のついたまま食べていたのにはびっくりしましたが・・・(先生たちも水洗いせずに食べていましたが・・・)

収穫の方ははニンジンと玉ねぎが不作でした。ニンジンの不作の原因は発芽の段階で余分な芽を間引かなかったことでした。玉ねぎの方はどうして不作だったのかわかりません。今年の失敗は来年改善していきたいと思います。

一方ジャガイモは豊作で400kg近く収穫することが出来ました。子どもたちが収穫した大量のジャガイモを重たそうに運んでいたことが印象的でした。

GNCの皆様に寄贈していただいたビニールハウスの野菜は、種付け時期が遅れたこともあり収穫高は少なかったのですが、立派なキュウリが収穫できました。また同じくトマトの方は寒害の恐れがあったので青い時期に収穫し、室内で保存して熟させました。

収穫した野菜は子どもの保護者、または近所の住人にはお店の値段よりも低価格で販売しました。野菜を購入する人がいるのか心配でしたが、予想を超す多くの購入者がいて一週間も経たないうちに完売しました。

収穫を無事に終え、改めましてGNCの皆様にはお礼申し上げます。GNCの皆様のご支援、特に日々多くのご支援をして頂いたツォゴーさんのおかげで63特別学校の畑の授業は無事終了いたしました。収穫までの半年間は長く、決して平坦な日々ではありませんでしたが、収穫時に子どもたちの表情がイキイキしていたことが何よりも嬉しいことでした。この活動を通して子どもたちにほんの少しだけ、野菜を収穫する喜びを味わってもらえたのではないかと思います。
収穫高(kg)
ニンジン 73.4
ニンジン不出来 4.6
ジャガイモ 395.1
ジャガイモ不出来 4.9
カブ 25
キャベツ 19
キャベツ不出来 6
たまねぎ 3
トマト 7.5
白菜 6.5
キュウリ 13.8
短いキュウリ 3.6

モンゴルは氷点下20℃の日々が続いています。これから5ヶ月間は畑を使っての授業は出来ませんが、私が担当している2年生のクラスではニンジンのヘタの部分と玉ねぎを水につけるとどのように成長するのかという授業をしています。学校の室内は植物が生長できる温度になっているので、室内でできる植物観察をしています。この授業を通して子どもたちがさらに植物に興味を持ってくれればと思います。 そして来年以降の畑の授業に繋がればと思います。

来年以降も畑の授業は続けて行く方針です。今年の畑運営の失敗を十分に反省し、来年の畑運営に活かしていきたいと思います。
GNCの皆様ご支援本当にありがとうございました。今後とも何卒63特別学校を宜しくお願いいたします。

          




 

GNC Global Network for Coexistence
ホームへ